難しくて面白い選択肢
先日、大手のIT企業をやめた。
会社自体は大きくて安定もしていたし、労働環境も、テレワークだったりと、側から見ると何不自由ない働き方だったと思う。
ただ、その中で、仕事内容は半年ほどシステムの試験ばかりで、開発がやりたくて入社したものの、実際にその会社に在籍した一年半で、開発に従事できたのは3ヶ月程だったように思う。
もちろん、実力不足もあったのだろう。未経験で入社し、趣味でずっとコードは書いていたものの、実務と趣味では差がある。
最初のうちは、趣味でコードを書いているだけで気持ちが満たされたし、そうすることの自己肯定感もあった。
でも、そもそも開発がしたくて入社した私にとって、テスト業務は、楽だけど、面白くない選択肢だった。
ただ、周囲の人からは、安定もしているし、大企業だし、そのまま残ることを勧められた。
私にも、周囲の人たちの意見はよく理解できた。確かにサラリーマンとして働く以上、自分がやりたいことを常にできるわけではないし、会社という人の集団の中でポストも決まっている。
当時は試験チームの管理業務に従事していたため、正直テストを実施する機会は少なく、タスクの切り分けや、業務ツールの作成などをしていた。
確かに、ツールを書く時にはコーディングするので、開発に近いことはできていたかもしれない。
それでも、それはツールにすぎず、お客様に利用されるシステム開発、とは異なっていた。
そんな時に、以前登録していた転職サイトに、とある会社から連絡が届いた。
正直、当時務めていた会社よりも忙しそうだったし、楽ではないなという印象を持った。
ただ、面接で話をさせてもらった人の誰もが、純粋に知ることに意欲的な人が多かったし、また理念を持った役員もいた。
もちろん、必ず開発に従事できると約束されたわけではないが、強くその企業に惹かれたのは事実だった。
今振り返ると、難しくて面白い選択肢をとれたので、良かったのかなと思う。
実際、入社すると全然開発できなかったり、実力が足りなさすぎて苦労することも多いのだろうけれど、それでも、ただ無為に時間を過ごしてしまうよりは前に進めるのではないかという気がする。
たくさんの情報に溢れた現代において、選択肢はより一層増えているように思う。
自分がどんな目的で、何が純粋に面白いと思えているのかを整理する時間がなくては迷ってしまうなと思った。
それは不安定だし、先が読めないし不安も多い。
ただ、楽で面白くない状況に甘んじた結果、待っているのは明るい未来ではないのではないかな、と思う。
良くも悪くも、私の替えはどこにでもいて、かつ、グローバル化した世界で、日本以外の人々も公平に評価されている社会の中で、安定にすがって生きていくのは私の価値観とは合わなかった。